Keiの感想帳

フリーランス翻訳者Keiです。日々、感じたことを書き留めていきます。

「マダム・イン・ニューヨーク」@元町映画館

先月末から今月は、納期が厳しい大型案件を抱えているので、なかなか丸一日仕事をオフにすることはできないのですが、一回目の納品を終えた昨日、一息つくにはうってうけの映画を見てきました。 

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「マダム・イン・ニューヨーク」。初めてインド映画を見ました。

シンプルなストーリーに、主人公シャシを演じるシュリデヴィの美しさ、サリーを着たシャシが歩くNYの街の風景、”適度な”(「踊るマハラジャ」のような大エンターテインメント風ではない)歌と踊り、見ていて気持ちが良かったです。

シャシはビジネスマンの夫と2人の子供を持つ主婦。物質的には何不自由ない暮らしですが、夫や娘が何気なく無神経に放つ言葉に傷つき、妻であり母親であることの空しさのようなものを感じる日々でした。

そんなシャシが、ニューヨークに住む姉の娘の結婚式のため、家族より一足先にニューヨークに向けて旅立ちます。

英語を話せないシャシにとって、はじめての飛行機、空港の入国審査、NYの街角のカフェ、地下鉄の改札口、電話をかけること、すべてが緊張の連続。

優しく手を差しのべてくれる人はいても、不安、心細さ、困惑、そして、言葉がわからないことでぞんざいな扱いを受ける辛さ、疎外感にうちひしがれます。

言葉の通じない異国で一人で行動しなければならないときのあの気持ち。。。私自身も経験あることで、うんうん、わかる、わかる、と共感できる場面がたくさんありました。

ふと目にした英会話学校の広告。シャシは家族や姉に内緒で4週間のクラスを受講する決心をします。

いろいろな国から来た楽しいクラスメートと先生。

ここがシャシにとって、失われつつあった自尊心を取り戻していく場になっていきます。

最初の授業での自己紹介のとき、シャシが料理が好きでときどき頼まれてお菓子のケータリングもすることを話すと、先生は「entrepreneur (起業家)」という単語を黒板に書きます。シャシにとってささやかな主婦業の一つとしてやっていたことが、「entrepreneur」にも値するようなことであると初めて認められたような嬉しさをかみしめます。

また、冠詞の使い方をよく注意されるシャシは、「India (インド)にはtheがつかないのに、なぜ、United States of Americaにはtheがつくのですか」と質問します。先生にもクラスメートにも「いい質問だね」と言われ、ちょっと嬉しくなったり。

(*私も冠詞は今でもよく迷うところ。映画の中では説明されていなかったので、一応、文法書を調べてみました。国名は一般に無冠詞であるが、「of~」の限定がつくもの(the People's Republic of China 中華人民共和国)、複数形(the Netherlands オランダ)の国名には the がつく、となっています。この機会に、久しぶりに開いた文法書の冠詞の章にざっと目を通してみましたが、やはり難しい...)

(映画に戻って)ますます英語の勉強に熱が入るシャシは、勉強のために見ていたDVDの中で俳優が発する「judgmental(決めつける)」という単語が気になります。姪っ子に尋ねてこの単語の意味することを知り、心に刻みます。

英語、クラスメートとの触れ合いを通して、シャシは、人それぞれ価値観は違うこと、自分に誇りをもつこと、人を決めつけてはいけないこと、お互いに尊重することの大切さ、そして自分にとって大切なものが何かを確信していきます。

そして、授業の最終日と重なった結婚式でのシャシの感動的な英語のスピーチ。

自分を知ること、人を尊重すること、広い世界を知った上で小さくても自分の世界を作ることの幸せ・・・といったメッセージを私も受け取りました。

この映画のすうーっと心におさまる ”正しさ” ”安心感”が、疲れた頭には心地良かったです。

そして、なんといっても、女性の弱さと強さと優しさと美しさを、さらりと演じているシュリデヴィ。 いい女優さんだなぁと思いました。

さて、元町映画館では、映画の中でシャシが結婚式のために作るお菓子「ラドゥ」が販売されていました。インド人シェフが作ったものだそうです。

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サクサクで、手で割るとすぐにパラパラとくずれました。

砂糖の甘さと、スパイスの香りが効いています。沖縄のチンスコーにちょっと似てるかな。おいしかったです。

元町映画館は、メジャーな作品ではないけど評価の高い作品や芸術性の高い作品などを上映しているミニシアター。これまでに何度か行きましたが、昔からの店が建ち並ぶ元町通りの雰囲気に溶け込んだ味わいのある映画館です。

 ホームページをみてみると、

「地元の映画ファンに、多様な映画を見る機会を少しでも増やしたい、との想いから、映画館経営の経験も無い、資金も無い素人集団が・・・壁や天井のペンキもボランティアを募って みんなで塗り、床のカーペットもみんなで敷きました。・・・わたしたちは、お金もうけをするつもりでこの映画館をつくったわけではありません。そもそも映画館はみんなのもの、公共性をもったものであるべきだと思っています。」とあります。

あー、まさに!

手作りの宣伝チラシや、スタッフの方々の観客誘導などのきめ細かい対応からも、純粋に良い映画を観てもらいたいという気持ちが感じられます。

他館と同様の料金割引デーのほか、当館独自のポイントカードによって5回につき1回無料で見れるというサービスまであります。

次回は、割引デーではなく、通常料金の日に行こうと思います。