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Keiの感想帳

フリーランス翻訳者Keiです。日々、感じたことを書き留めていきます。

ターナー展@神戸市立博物館

英国の風景画家ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775-1851)の展覧会に行ってきました。f:id:kei-diary:20140115100748j:plain

ロンドンのテート美術館のコレクションから113点が展示されています。

天性の画才を持っていたことがよくわかる10代半ばの水彩画や鉛筆画から、森、海、空が印象的な油彩画の大作、そして晩年の「もやがかった大気の中に物の輪郭が溶けていくような」画風の作品まで見ごたえがありました。

私は晩年の光を表現した柔らかい色彩の作品がとても好きです。

特に、この「ヴェネツィア、月の出」。

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他に、詩集のための挿絵や、旅をしながら小さなスケッチブックに描いた風景画も必見。

さらに愛用の絵の具箱も興味深いものでした。豚の膀胱から作られた絵の具用の小袋や、小瓶、パレットなど、実際にこれらをターナーが手にしていたことを想像するとちょっとワクワクしました。

ところで、私がターナー展の開催を知ったときにまず頭に浮かんだのが、山下達郎の「ターナーの汽罐車」という曲でした。

「虹色のシャンペンを かたむける君の見つめる絵はターナー おぼろげな汽罐車が走る 音も立てずに」

昔から好きでよく口ずさんでいましたが、その「ターナーの汽罐車の絵」がどういうものかはずっと知りませんでした。

今回の展覧会ではこの作品は展示されていませんが、ネットで調べてみると・・・ありました。これだったんですね。

「Rain, Steam and Speed - The Great Western Railway (雨、蒸気、速度-グレート・ウェスタン鉄道)」(1844年)

 

私の頭の中でお気に入りの山下達郎の曲とターナーの絵が重なり合って、感慨ひとしお。

ターナー展は4月6日(土)まで。



 

2013年大晦日

例年より早く年賀状の投函や掃除を済ませて大晦日を迎えることができました。

仕事は、27に納品を終え、さらに新たな案件を2本抱えての年越しとなりました。
 
今年は、家族に関する問題が次々と起こり、心安まらない日が多い年でした。
 
両親も高齢になり、私には重過ぎる課題であっても、私が主導的に対処しなければならない状況にいることを実感しました。そして、逆に、これまではほぼ自分のことだけを考えて過ごすことができていたことがなんと有難いことだったかと思います。
 
いろいろなことでバタバタして様々な感情に揺さぶられる日々の中、自分の好きな仕事が生活の「基軸」にあることの大切さを感じました。
ひたすら文章と向き合う時間の貴重さ。
基軸の仕事が安定していたことで救われました。
 

翻訳の仕事を始めて10年、これからも大切に育んでいきたいと思います。

 

「使いきる。」

立ち寄った書店で手に取った本。有元葉子さんの「使いきる。」

断捨離や整理収納術に関する本やテレビ番組はよく見るのですが、なかなか実践できていないのが現実。
 
この本は、有元葉子さんの長年の試行錯誤の結果としての方法や日常使っているアイテムが素敵な写真とともに紹介されています。
 
有元さんの整理術はとてもシンプルで説得力があります。

自分よりはるかに多くの経験を積んだ目の肥えた人生の先輩からバシッと「答え」を教えてもらっているような気分になります。

汚れや、物や、そして心の中にも「よけいなものはためない」、入れたものがスムーズに流れ、循環していることが快適である、と。

ふきんは木綿の「和太布」と「びわこ」、さらし・・、リネンのミトン、食器、水切りかご、籠類、アイロン台、そして長野の道の駅で100円で買ったというほうきに至るまで、気に入ったものは何十年も使っている。
マニキュアは一本だけ、Tシャツやセーターは定番のシルエットの色違いをクローゼットに収まる分だけ持つ。
住まいの洗剤は「SWIPE」だけ、用途に合わせての濃度を変えて使う。
一度に鰹節一袋分のだしをとって冷凍・・・

なるほど~。

そして、自分自身の持ち物を見直すと、バラバラ~。
衝動買いしてほとんど着ていない服や、使っていないマニキュアや口紅が複数本。

大切なことは、自分にとって本当に必要な物を選び抜くこと。

選ぶ基準は値段やブランドではなく、あくまでも”自分”。自分にとって日常的に使い勝手がいいもの、自分の好みに合った飽きのこないもの。

そう言えば、56年前に買った大原照子さんの「55m2の暮らし替え~スローライフの舞台作り~」という本もたしか同じような類の本だったことを思い出しました。
 
活動的で忙しさを楽しむような生活を送ってきた大原さんが75歳を過ぎて体力の衰えを感じたのをきっかけに、がらりと生活を変えようと思い、100歳になってもおしゃれで、元気で、愉快に暮らせるようにとリフォームした自宅が紹介されています。
 
こちらも家具や食器などの一点一点に無駄がない、大原さんにとっての究極の住まい。

お二人とも自分が何を選ぶべきか、それをどう使うべきかがはっきりしている。
そして、潔い。必要でないものは買わない、手放すということ。
 
簡単にできることではありませんが、せめて今から意識することから始めてみようと思いました。

年を重ねるにつれて、シンプルに、身軽に、生きていきたいから。

「舟を編む」

先日、映画「舟を編む」の特別上映会が神戸文化中ホールであったので観に行ってきました。

原作は三浦しをんの小説。

 

辞書編集部を舞台に、見出し語24万語の辞書「大渡海」を完成させるための15年にわたる編集作業と、それに関わる人々を描いています。

 
1995年、電子化の波が押し寄せる気配を感じながら、採取した用例を一つずつカードに手書きしていくという作業から始まる。その後、見出し語選定、語釈、校正と続く。
 
辞書に使用する紙選びの場面も興味深かった。なるほど、ページをめくるときの感覚、1枚1枚張り付かない紙、微妙な手触りの違いを見極めて選択するんだなぁ、と。

こうした気の遠くなるような地道な作業にのめり込む主人公馬締(まじめ)と、彼を取り巻く人々、支える人々のさりげない愛情表現、温かさがさわやかで心地よかったです。
 

プーシキン美術館展@神戸市立博物館

モネ、ルノワールセザンヌ、ドガ、ゴッホゴーギャン、ピカソ、マティスドラクロワアンリ・ルソー・・・

一つの展覧会でこれらそうそうたる画家の選りすぐりの作品を観ることができる、そうそうない機会。
平日の午後に入館。予想通り混雑していました。
音声ガイド(ナビゲーターが水谷豊さん)を聞きながら鑑賞する人も多く、その人達の合間から覗くようにしての鑑賞になりました。
この展覧会最大の見どころとされている日本初公開のルノワールの《ジャンヌ・サマリーの肖像》。
 
華やかで微笑んでいると思っていたジャンヌ・サマリーの表情も、目の前で観るとどことなく瞳に憂いを感じたのは私だけかな。
こちらの「iMuseum Talk」というサイトに、当時の女優という職業の位置付けや時代背景についての興味深い解説があります。
鹿島茂(フランス文学者)先生の「女優の肖像」(語り)と池田理代子さんの期間限定の漫画。
1枚の絵を通じて想像の世界が広がります。
 
さて、私はセザンヌの絵が好きなのです。
特に色合いが。
 
この≪パイプをくわえた男≫もセザンヌ独特の深い色使いが良いなぁと思いました。
不安定な構図も面白い。
 
セザンヌは、モネやルノワールなどの印象派グループから離れて「自分の目で見て、自分の感覚で一から創りあげていく」という独自の絵を探求し始め、後のピカソを代表とするキュービズムの形成に影響を与えたと言われています。
 
うーん、できればもう一度行ってじっくり観たい絵がたくさんありました。
 128日(日曜日)まで。

「クロワッサンで朝食を」@神戸アートビレッジ

フランスの大女優ジャンヌ・モローと、エストニアの女優ライネ・マギ。
このポスターを見た瞬間にこの映画「クロワッサンで朝食を」を観たいと思いました。
 
ポスターと邦題からは、いかにも"パリのマダムのお洒落な・・・”というイメージ。
たまには、自分とかけ離れた世界に数時間浸ってみたいという気持ちで観に行きました。
ですが、原題は「パリのエストニア女性(Une Estonienne a Paris)」。
 
若い頃にエストニアからパリに移り住み、奔放な人生を歩んできた老婦人と、人生半ばを過ぎて家政婦として初めてエストニアからパリにやってきた女性の話。
 
それぞれの人生を送ってきた2人の女性が、少しずつ互いを理解し合いながらも、適度な距離のとり方を探りながら生きていくのだろうか、と思わせるエンディングまで、
誰にでも訪れる人生の転機、現実に向き合い、少しずつ変化していく2人の女性の姿は、自分とそれほどかけ離れてもいないところもあって(かといって似てもいないのですが)引き込まれる内容でした。
 
そして、やはり舞台はパリ。
アンヌの心情とパリの風景が重なる素敵なシーンがたくさんありました。
夜になってフリーダが眠った後、アンヌがパリの街を一人で散歩するシーン。
アンヌにとって「憧れのパリ」にいるというささやかな喜びの中で自己を見つめ、自分を再生しようとしているかのような穏やかな時間の流れ、その孤独な心地よさ、わかるような気がしました。
そして、後半の、フリーダの元を去ってエストニアに戻ることを考えていたアンヌが早朝、エッフェル塔の前に立ってクロワッサンを頬張るシーンも。
前方を見つめるアンヌの姿の美しいこと。
 
人生半ばを過ぎても夢や憧れにふと心躍らされることがある、それは決して若い頃の希望に満ちたときめきとは違うのだけど、そんなささやかな心の動きが生きる力をよみがえらせるもの。
 
あらためてそんなふうに感じさせてくれた、今、観ることができて良かったと思う、静かな余韻の残る映画でした。

いつもちょっとマイナーだけど味のある良い映画を上映するミニシアターが入っている神戸アートビレッジ(→)。
館内ロビーには、全国の映画、展覧会、コンサート、イベントなどのアート情報がいっぱい。
またまた、たくさんのパンフレットをピックアップして帰りました。
 
 

橋本関雪展@兵庫県立美術館

橋本関雪は、京都の居宅「白沙村荘」が有名なのでてっきり京都の画家だと思っていましたが、旧明石藩の儒学者を父として1883(明示16)年に神戸で生まれたということを知りました。
 

生誕130年記念のこの展覧会では、初期から晩年までの中国の古事を題材にした作品や、動物画、山水画などの代表作約70点が全国から集められ展示されています。

 

私が特に気に入ったのは動物画。

簡潔ながら隙のない構図と言われているように、非常に細密に描かれた動物と、その周りの”空間”のとり方が印象的でした。
 
「玄猿」の猿の伸ばした手の先の空間や、「唐犬図」の犬が見ている先の空間。
 
また、白い狐と白い夕顔を描いた「夏夕」や、白いテナガザルを描いた「霜猿」などの”白”も印象的で、凜とした品格を感じました。

 展覧会は10月20日(日)まで。